◆月の色 <ホワイトバランスの研究>
 単純に考えると、地球も月も同じ太陽からの光を浴びている。ならば月に向けたデジタルカメラのホワイトバランスも太陽光の設定でよさそうなものだ。例しにホワイトバランスを太陽光(Daylight)に設定して撮影してみると薄〜く黄色味を帯びた画像となる。確かに肉眼で見る月は多少なりとも黄色系に振れているようだ。ならばこの設定が正解なのだろうか。

 その前に、実際に月はどんな色なのだろう。組成からすると地球の玄武岩などと同じようなグレー系のようだ。アポロ計画や月周回衛星「かぐや」がもたらした画像を見ても、多少の色浮きはあるにせよグレーの範疇と言えそうだ。ならば、肉眼で見た場合や太陽光に設定したデジタル画像に見受けられる黄色味の正体は何だろう。

 実は地上から見た月の色には地球の大気が影響している。水蒸気や塵を含む大気の層は短い波長の光を散乱させ、波長の長い、つまり赤系の色を効率良く透過する性質を持っている。それ故に大気層が分厚くなる地平線に近い月は赤く、大気層の薄い天頂付近に位置する月は無彩色に近づくわけだ。

地平線上の月は天頂付近の月に比べると分厚い大気(b)を通して見ていることになる

 月の出からおよそ2時間後、比較的高度が低く大気の影響で薄黄色に見える満月を撮影した。カメラのホワイトバランスはAutoをのぞく全てのマニュアル設定を試している。
太陽光(Daylight) 曇天(Cloudy) 日陰(Shade)
昼白色蛍光灯
(Day White Fluorescent)
昼光色蛍光灯
(Daylight Fluorescent)
電球(Tungsten)

 以上の撮影実験もふまえ、地上からの見た目重視なら太陽光(Daylight)で撮った上で彩度を落とすレタッチを施すと良さそうだ。トーンカーブ調整を含めたレタッチを施してみる。

 リアリティ優先ならモノクロームに近い昼白色蛍光灯(Day White Fluorescent)の設定が一応の回答となりそうだ。
 初めからモノクローム設定で撮るのも選択肢のひとつだろうけど、カラーで撮っての結果としてモノトーンに拘るならば、最適なホワイトバランスを見いだすべきだと考える。
 また、蛍光灯に対応したホワイトバランスは機種によって違ってくる。色温度のマニュアル設定が可能な機種ならよりグレーに近い発色となる設定をアレコレ試してみるべきだろう。

- 作例画像共通データ -
スコープ:Kowa TSN-824M + TSE-9W(50xアイピース)
カメラ:CASIO EX-Z850   ISO50・f=9.5mm・Mode:M(F2.8・1/160sec)・AF



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